高等遊民前夜

毎日やっつけエブリデイ

金沢紀行

 11月12日(金)に有給を取得して同居人と金沢へ現実逃避をしてきた。最近ずっと仕事に苦しめられる日々で心身ともにしんどく、休日にもなんだかんだ惰性で仕事をしてしまう習慣となっていた。骨の髄まで社畜根性が染みついているのです。だから強制的に仕事が離れたいなと思っていたところ、同居人が「蟹が食べたい」と言いだしたことを好機と思い、思い付きで旅行を決めた。私のためではない、同居人のためという口実である。一泊3万円越えの蟹づくし旅館。倹約家の星のもとに生まれた私にしては財布のひもが緩んだほうだと思う。

 11時台の名古屋駅からの特急しらさぎのチケットを事前に予約しておき、余裕を持って向かう。金沢という場所は、愛知県民からしたら「旅行感」を出すには程よい土地だ。静岡や岐阜、三重だと少し近すぎるけど、九州や北海道は遠すぎる。北陸は、JRの特急で3時間で行けるから日帰りもできるし、ある程度離れているから小旅行にはうってつけなのだ。牛タン弁当を買って特急しらさぎに乗り込んだ。

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 14時過ぎに金沢駅着。金沢駅は飲食店や土産店がまとまってあって、旅行客に優しい駅だと何度来ても思う。案内板も見やすい。観光でがんばっている土地は観光地として訓練されていてすがすがしい。名古屋市はそういった雰囲気はないからいつもそう感じる。ロッカーに荷物を入れて、おでんを食べに行く。金沢と言ったらおでん。この季節に金沢を訪れておでんを食べない理由がない。私は金沢には毎年のように来ていて、金沢駅内にある「黒百合」というお店にはいつも訪れておでんを食べることにしている。同居人は金沢は初めてだけれど、おでんが大好物だからひどく楽しみにしている様子だった。

 着くと客が並んでいたから、受付表に記入だけして駅周辺を散歩する。金沢駅といえば、兼六園口の方の大きな鳥居が有名だけれど、反対側は見たことなくて行ってみた。オーパーツみたいなでっかいオブジェがあった。近くのベンチに座って暇をつぶす。晴れて暖かい気候といっても北陸とあって肌寒い。日の当たる駅舎の外の方があたたかかった。

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 しばらくして一度おでん屋さんの前に行ってみると、ちょうど自分たち二人が呼ばれるという奇跡的采配ですぐに席へ通された。座席は90分制と言われたからとりあえず頼んでしまおうと思って適当に頼んだら30秒もしないうちにおでんと牛すじ煮込みがやってきた。オペレーションが神がかっている。薄口だしで味付けされて辛子を付けて食べるタイプのおでんが好きだから、この辺りのおでんはドストライク。同居人に対しては「絶対美味しいから!」とハードルを上げていたけれど、うまいうまいと食べていたから安心した。

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 その次に巡回バスで茶屋町へ異動して抹茶白玉ぜんざいを食べ、その足で歩いて金沢蓄音器館へ。レコード好きとしてはいかなければいけない気がしたのだ。ここは私もまだ一度も言ったことがなかったからとても楽しみにしていた。

 入館料300円だったから正直あまり期待はしていなかったのだけど結果的には楽しかった。ここは大阪の水族館・海遊館みたいに最上階から階下へ降りながら観覧するスタイル。三階まで上がってから順路を歩いた。学芸員(?)のおじさんがそれはそれはユニークな人で、たぶん普通では見られない蓄音器の中をパカパカ開けてこれでもかと大盤振る舞いで見せてくれ、視聴もたくさんさせてくれた。展示してある蓄音機に手で触れようとすると警報が鳴るのだけど、学芸員のおじさんが蓄音機をじゃんじゃん見せてくれるからずっと警報が鳴りっぱなしで最高だった。お客さんが少なかったからこその対応だったかもしれないけどファンキーな時間だった。

 そのおじさんの話によると、金沢に貴重な蓄音器があるのは第二次世界大戦での被害が少なかったからとのこと。日本の他の地方都市は空爆のせいで蓄音器が消失してしまったが、金沢は被害が少なく、残された蓄音器の状態も良いとのこと。貴重なレコードも沢山残っていて、版元が復刻版を作成する際、本社にオリジナルのレコードが残っていないから金沢蓄音器館で昔のレコードを録音するなんてこともあったらしい。とにかく貴重なものがたくさんあるのは国内ではここだけとのこと。つきっきりで色々説明してくれるものだから、「館長さんかな?」と思っていたら違うと言われてさらに笑った。普通のスタッフの熱量じゃないでしょうに。

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 館内にはビクター犬でお馴染みのニッパー君も沢山あった。ニッパー君はかわいい。いつか家に置きたい。

 その後、チェックインの時間が近付いていたから予約した旅館に移動。エントランスでチェックインを済ませるとロビーに案内され、お茶と茶菓子が運ばれてきた。さすが高い宿だ。私はこれまでの旅行においては観光がメインで、宿は二の次だったからビジネスホテルや安い宿で済ませてきた。今回は宿泊と食事が主目的で、チェックイン早々にこんなおもてなしを受けることなんてまずないからびっくりしてしまった。これがブルジョアが普段受けている対応なのだと、同居人とふたりで舌を巻いた。意地汚い庶民根性丸出しのふたりで恥ずかしかった。

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 その後は夜ご飯の時間までお部屋でぼんやりした。部屋の窓からは眼科の川が拝めて風光明媚なんだろうけれど、私も同居人も田舎出身で川には見慣れているから普通に「川だね」で終わってしまうから損だ。川が全く非日常じゃないのだ。歳をとって経験だけが増え続けていくから、どんどん非日常を味わうのは難しくなっていくんだなと悟った。それにしても旅館の窓際にあるこの謎スペースはなんなのだろうか。

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 夜。蟹づくし御前。茹で蟹がまるまる一杯、蟹すき、焼き蟹。茶碗蒸しにも蟹が入っていた。ここで同居人のテンションは最高潮。めずらしく食事を写真に収めて盛り上がっていた。私は実は、蟹らしい蟹を食べたことがなく、今回の食事が初めてだった。サラダや茶碗蒸しに入っている蟹のほぐし身を食したことはあるものの、蟹の脚から身を出して食べるみたいなことはしたことがなかったのだ。同居人に「蟹ってどんな味?」と聞くと「味がすごく濃いカニカマだよ」と従前から説明されていた。じゃっかん胸高鳴らせながら脚から取り出した身を食べると、確かにカニカマ!若干、海のエグみが残っている濃厚なカニカマ!と盛り上がった。そこから、いかに日本のカニカマが本物の蟹に忠実なのか、蟹を追求する日本人の蟹愛の強さを語り合った。本物を食べながら偽物を語る悲しい庶民ふたりでした。一年分の蟹を一夜で食べたかも知れずとても満足。

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 写真には映っていないが、食後に蟹雑炊もあって本当にお腹が爆ぜて死ぬんじゃないかというくらい食べた。思えばお昼にもおでんをたくさん食べているのだった。

 明日は悲しいことに休日出勤だから、朝一で愛知へ帰らなければならず悲しいけれど、明日もお休みの同居人はご機嫌そうで万事OKな旅になった。食事が目的だったけれど、この後入った温泉もよかったです。大浴場だったけれど貸切状態で運もよかった。毎月2万ずつの家計貯金でもやった甲斐があったってもんです。また次の旅行を楽しみにちょっとずつ貯めていくとします。

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完。