高等遊民前夜

日記と考え事のログ

会いたい人がいるということ

 日曜日。寒い。マンションに一日中陽の光が当たらない場所があってまだ雪が残っていた。休日出勤からそのまま夜勤の同居人を送り出して1日が始まる。なんだかんだで今週はすれ違いがちだ。

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 売野機子氏の新作『君に会いたい』をようやく手に入れた。別の国の王子と王女が国を抜け出して3年ぶりの再会を目指す話、だと現状だと思われる。今のところはシンプルなボーイ・ミーツ・ガールだけれど、多分話が進むにつれて色んな人の思惑が入り込んできて複雑な話になっていくんだろうなと思う。

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 タイトルのとおり、会いたい人がいるという感情だけが原動力になって物語が進んでいく。そこに理論や理屈は無くて、とにかく気持ちに全振りなのだ。会いたいから行く。時勢柄、うらやましく痛々しいくらいの眩しさだと思う。

 売野機子は少年合唱団の日々を描いた『MAMA』という作品から入って、純化された痛々しい感情を描くのが圧倒的すぎてすぐに好きになってしまった。この物語の設定は、その少年合唱団に入った少年の中には神がかった美しい声を得られる者がいるが、その声を得られた少年は幾ばくもなく命を落としてしまうという現実離れしたものになっている。そちらに注目されがちだけれど、私はこれはただの枠組みみたいなものだと思っていて、その中で起こる少年たちの羨望や嫉妬、恋慕などの感情が錯綜していく様子が真髄だと思っている。天使の声を得た少年が命を落とす理由は作品ではほとんど追及されていないのも、そういうことなんじゃないかって思う。
 売野機子の絵柄は、どこかノスタルジックな趣があるのも良い。ものすごいベテランなのかなって一瞬見まがうほど。絵柄って、話の筋が良ければ関係ないっていう人もいるけど、私はやっぱり大事だと思う。どこか遠くの、でのさほど遠くないどこかの話を読んでいる感覚がある。2009年デビューのお方だから古い漫画ではないんだろうけど、この時代にこの不思議な絵柄が出てくるなんて奇跡だなって思う。直近の連載『ルポルタージュ』も面白いです。なんか回し者みたいになってしまった。早く世間に見つかってほしいけど見つかってほしくないみたいな、そんな心境。

   

(おすすめ三作。)