高等遊民前夜

日記と考え事のログ

好きなものを買い支えしようという話

 木曜日。私のささやかな楽しみの一つとして、二、三日に一回、仕事帰りの深夜に近所のコンビニへ寄って、好きなスイーツを買って帰るという習慣がある。そのスイーツは、おそらくそのコンビニが力を入れて売っている商品ではないけれど、深夜にいつも1〜2個は陳列されているくらいの立ち位置。ところが最近、仕事が多忙になって疲弊しており、そのコンビニから足が遠のいていた。疲れ果てているから甘いものが食べたいけれど、コンビニに寄る気力がないくらいに疲れ果てていたのだ。
 先日、思い立って帰りに寄ってみると、いつものスイーツがない。まあ、いつも1〜2個しか入荷してなかったし、誰か別のお客さんに買われてしまったのだろう。そう思って気にしていなかったけれど、あれ以来その店舗でお気に入りのスイーツを見ることはなかった。代わりに「どらもっち」というどら焼きの棚が広くなっていた。今日、ちょうど仲良い店員さんがいたから、会計の際に「最近あれ入荷してないんですね」と言うと、「実はあれ、」と言いにくそうに衝撃の事実を告げられてしまった。「あれを定期的に買って行かれるの、お姉さんだけなんですよ。ほぼお姉さんのために入荷していました…」と。
 私としては、まさか自分しかあれを買っていないなんて、と衝撃を受けてしまった。確かに私は、2〜3日に一回は来店して、スイーツの他にも色々買っていくタイプの客だから、毎回仕入れるメリットはあるのかもしれない。でも、流石に他の人も買っているんだろうと思っていた。ところが、たまに買う人はいるものの、安定して買い求めるのは私ただひとりだったらしいのだ。

 駅近だったり、繁華街のコンビニだったら幅広いお客さんがくるからいいのかもしれない。でも近所のコンビニは住宅街にあるタイプの店舗で、おそらく主要な客層は近所の住民のみに限られている。かなりのクローズド・マーケットだ。そういった店舗において、1人の客の影響力は思った以上に大きいもので、その1人が来なくなるだけで、入荷する商品が変わってしまうくらいの打撃があるのだと思い知った。当然だけど、お店はボランティアでやっているわけじゃないから、好きなら好きでちゃんとお金を落とさないと、気がついたら好きなお店じゃなくなったり、お店そのものが無くなったりするんだろうなと改めて感じる。1人の消費者の力は思うより強いらしい。

 話は変わるけれど、ちょっと昔、「ふくろうず」というバンドが好きで(解散してしまった今でも現在進行形で好きだけど)、いつかライブに行きたいなとずっと考えていた。ある時、あるラジオでボーカルの内田万里が「バンドを続けられるくらいには売れたい」と語っているのを聞いて素直に驚いてしまったことがある。ミュージシャン側が赤裸々に売れる/売れないの話をすることが少ないという背景も理由の一つだけれど、私にとってはまさかふくろうずが「売れていない」バンドだなんて思わなかったから。周囲にはふくろうずを聴いている人がけっこういたし、テレビの歌番組に出るようなメジャーさはなかったけれど、定期的に新譜を出していて、順調に成功を積み重ねているバンドだと思っていた。いつでもライブをやっていたから、いつでも行けると思っていた。結局、私は行きたい行きたいと言っていたライブに行くこともないうちに、ふくろうずは解散してしまった。めちゃくちゃに原点回帰していた最後のアルバムを何回も何回も恨めしい気持ちで聴いた。

びゅーてぃふる

びゅーてぃふる

  • ふくろうず

正直、本当に解散してしまうなんて思っていなかったんですよ。コアな音楽好きはみんな知っていたし。今思えば「みんな」って誰だよって感じですが。「推しは推せるうちに推せ」とよく言うけれど、忙しいことを理由にしてないで何回でもライブに行けばよかったし、ライブでこれでもかってくらい物販でお金を落として、隠れファンとか言ってないで周りにちゃんと、こんな音楽があるよ!って声高に言いふらして回ればよかったなあ、と今でも思ってしまう。今や過去の音源を聴くことしかできないことがかなしい。いつでも行ける、いつでも買えるって思ってしまうけれど、向こうだって商売なんだから買わないとやっていけないんだよな。当然だけど。

 コンビニでいつものスイーツが買えなかったことでこんなことまで思い出してしまったのだけれど、ちゃんと自分が好きなものに対して、ちゃんとお金を投資できるような自分でありたいと改めて思った次第です。基本的に自分は倹約人間だから、安く済ませることを重視しがちだけれど、かけるべきところにはお金を落として、うまいお金の使い方をできるようになりたい。新作のアイスやお菓子はスーパーで買ったら安いけど、どうぜ買うなら、無くなっては困るコンビニでちょっと高くても買う。Amazonで買ったら安いシャンプーも、どうせ買うなら、いなくなったら困る担当の美容師さんから買っている。映画は映画館でみるよ。すこし高いけど。本は文庫が安いけどなるべく単行本で買うようにしている。可能な範囲で文庫でも買います。ジャンルによっては発売時に買わないと絶版になってしまうからね。気になる音楽はYouTubeで視聴すれば無料だけど、なるべくCDで買うしサブスクでもガンガンきいて再生数を稼ぐよ。もちろんYouTubeの再生数でも貢献したい。そして好きなものを好きだと発信して、少しでも広がっていくように願っている。自炊が一番安いけど、なくなっては困る店で定期的に外食もしている。

 最近はなんでも無料で手にできる無料文化の時代に生きていて、定額制でお得に手に入ったりして、コスパがいいことばかりが追い求められがちだから、いざ何かをちゃんと買おうと思うと、思わず咄嗟に「高いな」と思ってしまうんですよね。これが本来だったはずなのに。私の周りにも、漫画は無料でしか読まない人で溢れているし、本もKindleで無料で読めるものしか読まない人もいる。無料の範囲で面白く楽しんで、その先に繋げられない人がたくさんいる。「定価」がいつのまにか、べらぼうに高いものみたいに扱われている。意識してお金を使わないと、自分が好きなものを生み出してくれている人たちへダイレクトにお布施ができないご時世になってしまったね。でも本当は、定額制も無料も、いろんな人が物凄い努力をして実現していることで、素晴らしいことでもあるから、それがいい方向に身を結ぶような消費者に私はなりたい。
 学生時代からの地道な貯金が功を奏し、生活は相変わらず苦しい面もあるけれど、最近はほんとうに欲しいものに容赦なくお金を落とせる余裕みたいなものが出てきて、自分にとって理想のお金の使い方に近づいてきてはいると思っている。今年もどんどこ散財しますよ。好きなものを好きだって声高に叫んでいきたい。

 

Tonight

Tonight

  • 内田万里

(元ふくろうずの内田万里さんは今はソロでやっているので、今度はガンガン応援している。)