高等遊民前夜

ただの日記です。たまに考えごと

病院巡回日

 土曜日。平日の疲れがあるからゆっくり眠っていたいけれど、今日は通院×2が控えているからちゃんと起きる。それだけで偉い。起きたいと思った時刻に起きられるのは素晴らしい能力の一つだ。当然のこととして捉えてはいけない。最近は、思春期の子どもにおおい「起立性睡眠障害」の認知度が高まっていて、まだまだ偏見は多いけれど自分が学生の頃よりはマシになっていると感じる。これもひとえにネットのお陰だろうな。これが当事者が専門書を読んで知るレベルの知識であり続けていたら、偏見は昔のままだろうから。
 中学校のとき、朝起きられない友達Cちゃんがいて、私と別の友達で、その子の家を30分余裕を待って訪ねて、その子が支度して出てくるのを30分待つ、という生活をほぼ3年間続けていた。Cちゃんは中学生になってからその症状が始まり、すぐに保健室登校になっていた。自分一人だと学校へ行くのをあきらめてしまうけれど、誰かが待っていると思うと頑張って起きられたらしい。私はすぐ近所の友達と待ち合わせ、中学校とは反対方向のCちゃんの家へ向かい、ピンポンを押してCちゃんのお母さんに挨拶する。そこからしばらく、Cちゃんが出てくるのを軒先で待っていた。時にはCちゃんが学校に行けない、という日もあって、その時は友達とそのまま学校へ行ったりもした。これは誰に頼まれたわけでもなかった。自然と私と友達がCちゃんちに行くのは毎日のルーティーンで、苦痛とか苦痛じゃないとかという軸さえない生活の一部だった。
 中学を卒業するとき、Cちゃんのお母さんにはめちゃくちゃ感謝をされた。でも、たぶん頑張って、辛い思いもしたのはCちゃんだと思っている。ただでさえ起きるのがしんどいのに、外には友達が待っている。そんな中で起きなきゃ起きなきゃと踏ん張って重たい体を引きづって玄関を出るのは並大抵のことじゃない。だって、普通の土曜日に通院のために起きた私の体がこんなにも重たいのだから。その後Cちゃんは高校は普通に行けるようになって、普通に就職している。私たちがしていたことは本当にCちゃん母に感謝されるようなことなのか、今でも時折疑問に思うけれど、結果的にはCちゃんは辛い時期を超えることができてよかった。私はいまとても眠い。

 出かける前に植物の水やりをする。冬越しの際に具合が悪くなって一気に落葉したオリーブにも新芽が芽吹いており、とても安心した。樹木は丈夫だ。力強い。生きていく力をくれる。手塩にかけた分だけ効果があり、報われた気分になる。労働とは大違いだ。

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 名古屋・栄へ移動。いつものメンクリへ向かう。途中、入れ墨いっぱいオラオラ系のキャッチのお兄さんに「お姉さんどこ行くの」と後ろからつけられ背中をぺたぺた触られて最悪だった。逆切れ気味に「通院です、急いでます!」とあしらった。私ってそんなにカモに見えるのだろうか。同居人にラインで愚痴ると、「天気がいいからオラオラ日和なんだよ」と能天気な返事が返ってくる。なんだよオラオラ日和って。
 栄は人が多い繁華街だけれど、徒歩圏内に錦三丁目(東京でいう歌舞伎町みたいなところ)があり、一本細い道に入るとまあまあ治安が悪い。街というのはどこもそういう二面性があるんだろうけど。名古屋駅付近も、そういう場所があったりする。一般向けのきれいなところと、そうではない場所が混在して磁場の狂ったところが街。

 病院は過去最悪レベルで混んでいた。ソーシャルディスタンスが聞いてあきれるくらいの大混雑。予約していったのに診察まで1時間半待った。昨年は受付してすぐ見てもらえたのに。春は環境が変わる季節でもあるから、進学や就職や異動だったりで抱えきれない苦悩を抱えてくるんだろうと思う。メンクリなんてこの世でいちばん流行っちゃいけない場所なのに。ここにいる人みんな、何かしら苦しんでるんだよな…と思うと、仕事や学校なんてやめて、みんなで離島へ行って、社会主義のつつましい村でも作ろうぜ!と言いたくなる(こういう「新しい村」的活動は歴史上何度も失敗しているわけだが。結局資本主義が最強ということか)。Cちゃんは元気にしているだろうか。

 メンクリが終わって昼過ぎ、次の歯医者までの移動時間を考えると、いったん自宅へ帰るべきか悩ましいくらいのころ合いだった。でも空腹だし、念入りに歯を磨きたいしでいったん帰路につく。最寄り駅から住宅街を歩いていると、桜並木の一本が伐採されていた。老木だから仕方ないのだろう。切られた木の周りだけ芝桜がこれでもかと咲いていて胸を打たれた。桜の一生をたたえているみたいだ。ずっとここに芝桜はあったのかもしれないし、近隣住民が植えただけかもしれないわけだけど、こういう景色からは決まって物語を読み取りがちだよね。そこに意味なんてたぶんなくて、人間のほうが意味を与えてるんだよなと考える。

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 自宅で軽食を食べ、念入りに歯磨きをして歯医者へ向かう。歯医者は名古屋市ではなく地元の市にある。もう10年以上通っている場所だ。そこは個人医院で、小学生だった私が通い始めた当初は雑居ビルの1フロアで営業している小さな病院だったのに、みるみるうちに評判を呼んで今では場所を移して大きな自社物件を構えている。予約したって30分以上待たされるのに、いっこうに患者が減らないのはすごい。
 今日は定期健診。歯科衛生士に「前回のレントゲンが2年近く前だから、そろそろ撮ってはどうか」と言われてお願いした。初めて見る姉御肌って感じの女医に「左奥歯の影がなんとなく怪しいんだよね~念のためもう一枚撮りたいんだけどいい~?」とめちゃくちゃフランクに言われてもう一枚撮ってもらう。今度は10年来お世話になっている院長が出てきて、奥歯と隣り合っている歯との間に虫歯があって、治療しなければいけませんと言われる。その場所は糸ようじも通らない、歯と歯がくっついた場所だ。そんな不可抗力みたいな場所にできるなんて。医者には、虫歯は遺伝と体質の影響が大きく、しっかり歯を磨いていてもなる人はなると説明された。じゃあなんで私は毎日何のために歯を磨いていたのだ。口臭予防ただそれだけのため?

 今日のところは歯のクリーニングと歯石取りだけを行い、一か月後から治療となった。さっきの姉御が女医に治療について説明される。多分そこそこ進行しているから、麻酔を打って削りますよ。ハイ。多分神経まではいっていないと思うけど、もしかしたら神経もとるかもしれないかもね~。はあ、そうですか。そんな感じで説明を流し聞く。歯医者ではこれまでさんざんひどい目にあっているから、いまさら歯を削り神経抜くくらいじゃ何の感情もないのだった。隣の席では小学生くらいの男の子がすごい顔で虫歯治療を受けていて、頑張れ、と思う。歯を健康にしないともっとひどい目に遭うことを、私は知っているぜ。

 その後帰宅。適当なご飯を食べて同居人とゴロゴロしていたら寝落ちしていた。